上述したマクロ解析は、今日使われている卓越したFRP配管規格、BS 7159 (Design and Construction of Glass Reinforced Plastics Piping Systems for Individual Plants or Sites) と UKOOA Specification and Recommended Practice for the Use of GRP Piping Offshore の基本となっています。
BS 7159
BS 7159 では、断面の応力計算を行うために鋼材の配管応力解析と同様な方法を用いています。これはFRP要素が連続体としての評価と試験に基づいています。熱荷重、自重、圧力、内圧など必要な伸長は、すべて同時に作用する荷重として評価されます。損傷は、等価応力による計算に基づいています。1つの垂直応力 (半径応力) は従来通り典型的な配管形状において無視され、軸応力が圧縮でなければ次の式のいずれか大きい値になります:
(軸応力が円周方向応力よりも大きい場合)
(円周方向応力が軸応力よりも大きい場合)
FRPの直交異方性により、許容応力に対して計算応力を評価する際に幾分困難さが生じます。通常は、積層は配管を円周方向に対して長手方向よりも強く設計され、1つ以上の許容応力が必要になります。これは、応力よりも設計ひずみを許容値とすることで解決されています。それぞれの方向での強度に対して比例する許容応力で実質的に調整しています。すなわち、2つの等価応力に対して許容応力があり、それぞれ (ed ELAMX) と (ed ELAMH) となっています。試験データに代わって、システムの設計ひずみは、想定される化学成分と温度条件によって規格の Tables 4.3 と 4.4 から選択します。
BS 7159 の計算式は応力式を次に列挙します:
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直管とベンドの合成応力:
sC= (sf 2+ 4sS2)0.5edELAM
あるいは
sC = (sX2 + 4sS2)0.5 ed ELAM
ここで:
ELAM = 積層の縦弾性係数で、CAESAR II では最初の式では円周方向の係数を用い、2番目の式では長手方向の係数を用います。
sC = 合成応力
sΦ= 円周方向応力
= sΦP + sΦB
sS = ねじり応力
= MS(Di + 2td) / 4I
sX = 長手方向応力
= sXP + sXB
sΦP= 圧力による円周方向応力
= mP(Di + td) / 2 td
sΦB = 円周方向曲げ応力
= [(Di + 2td) / 2I] [(Mi SIFΦi)2 + Mo SIFΦo)2] 0.5 (ベンドに対して), = 0 (直管に対して)
MS = 断面における ねじりモーメント
Di = 管内径
td = 積層設計厚さ
I = 管の断面2次モーメント
m = 圧力に対する応力乗数
P = 内圧
Mi = 断面における 面内曲げ モーメント
SIFΦi= 面内のモーメントに対する円周方向応力集中係数
M = 断面における面外曲げ モーメント
SIFΦo = 面外のモーメントに対する円周方向応力集中係数
sXP = 圧力による長手方向応力
= P(Di+ td) / 4 td
sXB = 長手方向曲げ応力
= [(Di + 2td) / 2I] [(Mi SIFxi)2 + MoSIFxo)2]0.5
SIFxi = 面内のモーメントに対する長手方向応力集中係数
SIFxo = 面外のモーメントに対する長手方向応力集中係数
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分岐管の合成応力:
sCB = ((sΦP + sbB)2 + 4sSB2)0.5£ed ELAM
ここで:
sCB = 分岐管合成応力
sΦP = 圧力による円周方向応力
= mP(Di + tM) / 2 tM
sbB = 方向のない曲げ応力
= [(Di + 2td) / 2I] [(Mi SIFBi)2 + Mo SIFBo)2]0.5
sSB = 分岐管ねじり応力
= MS(Di + 2td) / 4I
tM = ヘッダーの積層厚さ
SIFBi = 分岐管の面内のモーメントに対する応力集中係数
SIFBo = 分岐管の面外のモーメントに対する応力集中係数
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長手方向応力が負の場合 (圧縮の場合):
sΦ - nΦxsx£eΦ ELAMΦ
ここで:
nΦx = 円周方向の応力による長手方向のひずみに与えるポアソン比
eΦ = 円周方向の設計ひずみ
ELAMΦ= 円周方向の縦弾性係数
BS 7159 では、ベンドと分岐のたわみ係数 (k) と応力集中係数 (i) をたわみ性解析で用います。
BS 7159 はその使用に多くの制限を課しています。注目すべき制限は次のとおりです: 設計圧力は 10 bar まで、としています。積層の設計に制限があります。ベンドのたわみ係数 (k) と応力集中係数 (i) に制限があります。 (すなわち、ベンドの下部または内側の平均肉厚は公称肉厚の 1.75倍以下であること).
この規格はより洗練された、そして使いやすいものではありますが、適用範囲外の FRP配管であっても、次のように、この計算手法を用いることをお勧めします:
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ベンドでの圧力による剛性の硬化には、許容設計ひずみよりも設計圧力をもとにしてください。
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設計ひずみは、想定される運転条件におけるメーカーの試験データをできる限り もとにしてください。
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継手のたわみ係数 (k) と応力集中係数 (i) はメーカーの試験、あるいは解析データをできる限り もとにしてください。
UKOOA
UKOOA の規定は、運転条件でのより多くの制限とより安全側の仮定を置いて計算方法を単純化していることを除けば、多くの点で BS7159 と類似しています。
合成応力の計算を明確に規定するよりは、規定では破壊に達する等価応力を軸と円周方向応力の合成の理想的な包絡を定義しています。この線図は次のようになります:
(sx / sx-all)2 + (shoop / shoop-all)2 - [sxshoop / (sx-allshoop-all)] £ 1.0
ここで:
sx-all = 許容軸応力
shoop-all = 許容円周応力
規定は、安全側に線図の sa(0:1) で知られる sx-all と sx の 2倍になる shoop の点 (配管が圧力のみを受けた状態) を結んだ線より下に制限をとっています
この要求事項の暗黙の修正は、他に荷重のない場合の圧力による応力に対する安全率、標準では 2/3 を与えていることになります。これは、陽な形では次のようになります:
Pdes£f1f2f3LTHP
ここで:
Pdes = 許容設計圧力
f1 = 97.5% の下側信頼限界に対する安全率、通常は 0.85
f2 = 配管系の安全率で、通常は 0.67
f3 = 機械的荷重作用後の残留許容値比
= 1 - (2 sab) / (r f1 LTHS)
sab = 機械的荷重による軸曲げ応力
r = sa(0:1)/sa(2:1)
sa(0:1) = 圧力がない場合の長期軸方向引っ張り強度
sa(2:1) = 圧力のみが作用する場合の長期軸方向引っ張り強度
LTHS = 長期静水圧強度 (円周方向許容応力)
LTHP = 長期静水圧許容値
CAESAR II では、次のようにして計算しています:
規格応力 |
規格許容値 |
|
sab (f2/r) + PDm / (4t) |
£ |
(f1f2 LTHS) / 2.0 |
ここで:
P = 設計圧力
D = 配管平均外径
t = 配管肉厚
ベンドの Kと i 係数は BS 7159規格と同じであり、ティーについては規定がありません。
UKOOA 規定は、せん断応力は評価の中で無視されており、軸応力が圧縮であるかの考慮もされていません。ほとんどの要求される計算に詳細な説明はありません。