疲労解析の基本 (Fatigue Basics) - CAESAR II - ヘルプ

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配管と容器は、順調な運転を何年も経過した後に突然損傷することが知られていました。1940年から 1950年にかけて研究が行われました。主たる結果として、1955年に発行されたA. R. C. Markl の "Piping Flexibility Analysis" で、この現象が配管系の熱膨張による疲労が原因しており、損傷を防止する設計基準が検討されました。材料が疲労によって損傷すること、荷重の繰り返しで き裂の伝搬と損傷に至る形態が研究されました。

炭素鋼および他の金属は結晶構造で知られる分子組織で構成されています。これらの構造は理想的に均一な材料として製造することはなく、粒界と呼ばれるミクロ的に分割された島状の領域を持っています。粒界の中では、分子構造は保存されます。粒界境界同士では分子構造は同じですが、方向性が異なっているため、粒界境界では高いエネルギーとなっています。塑性変形が粒界内で始まると、高応力状態になり隣り合う層が同じパターンですべりを生じるような方向の応力になります。転移と呼ばれるすべりの増分は、局部的に冷間加工として働きます。最初の応力の作用で、転移は高応力になっている粒界に沿って動き、応力が繰り返されることによってその粒界に沿ってより多くの転移が起こります。応力の繰り返しによって転移が粒界に蓄積されます。転移の動きは粒界で妨げられます。その後、さらに繰り返し応力が作用すると、粒界は裂けて き裂が生じます。ついには粒界でその密が高まり、これによって延性が失われ、さらなる転移の動きを妨げる結果になります。その後さらに繰返し応力が作用すると、粒界は裂けて き裂が生じます。繰り返しの応力の作用は、き裂の成長の原因となります。繰り返し応力が弱まらない限り、断面の強度が失われ、材料の壊滅的な損傷を引き起こします。

材料の疲労強度は、単軸試験機の繰り返される引っ張りと圧縮変形荷重によって推定することができます。材料の繰り返し応力強度の図は、疲労強度線図と呼ばれます。これら線図は、応力レベルの異なる複数の繰り返し試験から得られます。通常、作用する繰り返し荷重が小さくなれば、損傷に至る回数は大きくなり、これ以下の繰り返し応力では疲労損傷が起こらない疲労限と呼ばれるしきい値で、通常は無限界の繰り返し応力によっても損傷は起こらなくなります。炭素鋼と低合金鋼の疲労線図は、ASME Section VIII Division 2 Pressure Vessel Code (圧力規格容器) からとられています。これらの図を次に示します: