ウォーターハンマー荷重の解析における注意事項 (Notes for Analyzing Water Hammer Loads) - CAESAR II - Reference Data

CAESAR II アプリケーション ガイド

Language
日本語
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CAESAR II
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Reference Data
CAESAR II Version
13

この例では、次の式を用いて、ポンプ、あるいは供給サイドの弁について、圧力伝搬の計算を行いました。:

dp = ρ c dv

ポンプ、あるいは吐出サイドの弁について、圧力伝搬の最大値は流体気体圧力と配管圧力の差になります。

供給サイドでは、正の圧力伝搬がポンプから流体の音速で発せられます。 圧力伝搬の大きさは吸込み側の圧力と dp の和になります。

吐出サイドでは、負の圧力伝搬がポンプから流体の音速で発せられます。 この負の最大値は、ポンプ吐出圧力と流体気体圧力との差になります。 ポンプがシャットダウンすると、吐出側の圧力は落ちます。 下流側の配管の流体の運動エネルギーによって吐出側の圧力を押し下げます。 流体が気体圧力になるとポンプ近傍の流体はガス化します。 負の圧力伝搬はポンプから伝播しますので、このような気体泡は一瞬にしてつぶれます。 このような局部的な崩壊は非常に大きな圧力脈動の原因となります。 さらに、急激な圧力減少によって流体が逆流します。 このような逆流は停止中のポンプに衝撃を与え、気体泡の崩壊によって衝撃は加速され、極端に大きな下流のウォーターハンマーが引き起こされます。

ウォーターハンマー荷重はある程度繰り返し起こります。 圧力波は、最大の強さで配管系を伝わります。 波形のはね返りは、2次的な圧力の変化を生み出します。 非定常の流体シミュレーション、あるいは現場での計測データがない場合には、圧力波の 1つないしは 2つの最も厳しい条件での経路を想定します。

重要な配管系である場合、あるいはスナッバーや拘束に作用する最大荷重を計算するときには、圧力伝搬の経路の影響を考慮して、エルボ間の解析を行うのが望ましいでしょう。 エルボ間の圧力伝搬における最大圧力で、エルボに対して個別のスペクトル荷重セットが作成できます。 作用する荷重の方向は、エルボ間で引き離す方向になります。 個別の動的荷重セットは、それぞれの個別の荷重セットに対して解析が行われます。 この手法は、拘束点の少ない、低次に振動モードが多い大きなホットスチーム配管で十分実績があります。 他の配管系への応用は、設計者の判断にゆだねられます。

CAESAR II は、配管断面を通過する流体圧力波によって生じる局部的な円周方向の応力増加配管系の健全性をチェックしません。 流量の減少に伴うメカニズムによって、ウォーターハンマーの荷重の大きさを低減することができます。 弁の閉止に関しては、弁を緩やかに閉じることを意味しています。 ポンプの停止に関しては、ゆっくりとパワーを落とすことにほかなりません。 このような緩やかな作動は次式で表すことができます:

T = 2L/c

ここで:

T = 圧力波の 1サイクル

L = 配管系の特性長さ 通常はポンプ、あるいは弁と流体供給、あるいは受入槽までの長さになります。

c = 流体の音速

ポンプ、あるいは弁が T よりも短い時間で停止すると、このような急激な停止に伴うこの例のようにウォーターハンマー解析を行う必要があります。 このような問題についての計算は次のようになります。

最も注目すべきことは、弁の閉止、あるいはポンプの流量の減少に伴ってウォーターハンマーによる圧力波が生じないような最大の時間にあります。 いくつかの反射に関する長さを計算して、T の変化を調べます。 最も長い時間が、節点5 から節点125 のタンクまでの供給で圧力波を起こさせないことになります。 合計の L はおよそ 270フィートになります。

T = (2) (270) ft./(4281)ft/sec = 126 ミリ秒 (milliseconds)

圧力波が通過する際に最も問題となるのは、節点45 と 75 の間の長さになります:

T = (2) (90)/(4281) = 42 ミリ秒 (milliseconds)

ポンプ、あるいは弁が 126ミリ秒以上に緩やかに停止できるのであれば、配管系のウォーターハンマーはおそらくは和らぐでしょう。 節点45-75 のウォーターハンマーを防ぐには、ポンプ、あるいは弁が 42ミリ秒以上に緩やかに停止できるのであれば、配管系のウォーターハンマーはおそらくは和らぐでしょう。

ウォーターハンマーによる振動は、最初は配管内の軸方向の音響的な波形が局部的に非常に高い、非常に短い時間の荷重と応力を生み出します。 これらの短い時間の荷重は、通常は延性のある炭素鋼の配管系では設計の問題ではないでしょう。 ウォーターハンマー荷重による溶接部での き裂進展が問題の場合には、次のモデル化の規則を適用します:

  • 非常に高い固有振動数までを解析に含む必要があります。 カットオフ周波数は 300 Hz 程度までを必要とする場合もあります。 エルボ間の軸方向振動モードを対象とします。 より高い振動モードを計算しなければならず、さらに高い振動モードによって荷重/応力に変化を与えないようにすべきです。 最大のカットオフ周波数は、次の式で計算できます。

    SQRT (E/r)/L

    ここで:

    E = 管材料の縦弾性係数

    p = 管材料の密度

    L = 音響的応力波形のもとになるウォーターハンマーが通過することによる応力を計算する部分の配管長さ

    節点 45-75 のエルボ間 20フィートの最大カットオフ周波数は次のようになります:

    fcutoff = SQRT (E/ρ)/L

    = SQRT ((30E6)(32.2)(12)/(0.283))/20

    = (202388 in./sec) / (20 ft. 12 in/ft)

    = (843.3 rad./sec) / (2 p rad./cycles)

    = 134.2 Hz

    一方、喪失質量補正 (Missing Mass Correction) は、省略した高次振動モードを近似します。

  • 軸方向の要素の長さは、ct/4 以上でないことを確認してください。ここで、c は流体の音速、t はウォーターハンマーの時間です。 節点 45-75 のエルボ間の最大要素長さは、次のようにして計算できます:

    Lmax = ct/4

    = (4281) ft/sec (0.021) sec/(4)

    = 22.5 ft

    配管内を通過する応力波形による配管応力を推定するには、個々の要素は 20フィートより短くしてください。 より短い時間では、より短い要素でなければ、応力波形の応答を正しく計算できません。

  • より高い振動モードの応答を含めても変形の計算結果に影響は与えません。断面力と応力に影響が出ます。 この例での 6 から 8インチ の変形結果は、刺激係数が 0.01 程度の低周波数の振動モードで十分な精度で計算できます。